2019/11/11 忘れた記憶を思い出す薬

夜のアオサギ

 先日の新聞にとあるめまいの薬を通常の3~6倍を20代の健康な男女に飲ませて実験したところ、忘れた記憶を思い出す効果があったとの記事が載っていた。テレビでも紹介されたようだ。痴呆症の治療に使うことを目指すのだそうだ。
 アメリカの医学雑誌の電子版に掲載されたのだが、ネットでは要約しか読めず、内容を詳しく知ろうと思うと有料になってしまう。仕事に直接関係するのなら払ってもいいのだが、そうでもないかと有料ダウンロードはあきらめたが、想像がどんどんと膨らんできてしまった。
 そもそも忘れた記憶ってなんなのか。どれだったか映画でのセリフに、人間は何も忘れないのだが、思い出せないだけという意味のものがあったと思う。ヒスタミンという物質の放出を増やすらしい作用のある薬で忘れた記憶が、思い出せるとすると、記憶とはどんな形で脳に保存されているのか、イメージするのが難しい。
 もし、ものを忘れるという機能が人には必要で、ヒスタミンの放出が制限する機能が備わっているととしたら、この薬を飲むことによって、思い出したい記憶だけではなく、忘れたかったこと、思い出したくない記憶まで、丸ごと全部思い出されてしまうということもあるのかもしれない。そもそも思い出すって脳の中で何が起こることなのかというのもよくわからなくなってきた。
 この薬で、いつ覚えた記憶までが思い出せるのかというのも問題になる。それこそ「走馬燈」のように、あるいは、ビデオテープを流すように、ただただ、記憶されていた画像が脳裏をめぐるというだけでは、それを思い出せたというのかもよくわからない。
 何しろ、今、日本では受験の時期。覚えたことを試験の時に思い出せるように、受験生が病院に殺到、めまいがするから、この薬を指名して処方して欲しいと言っていないか、あるいは、個人輸入が増えていないか、気になるところだ。
 ただし、試験で使おうと企む場合、少なくとも一度は「覚えた」ものでなければ、そもそも「思い出せない」。勉強しなかった人が、テストの時に急にできるようになる魔法の薬ではないはずだ。思い出そうと思うものが、ちょうどよく思い出せる機能があるのか、興味深いところではある。
 妻の友だちが、めまいでこの薬を長く飲んでいるのだそうだが、昨日の晩御飯のおかずも思い出せないといっていたらしい。通常の処方量しか飲んでいないからなのかもしれない。好きなバンドのコンサートについては昔のものまですぐに思い出せるそうなので、もしかしたら効いているということもあるのかもしれない。ただ、通常量だと昨晩のことを思い出すのには効かずに、ずっと昔のものしか思い出せないとか、、、。
 薬を飲んだとたん、忘れたかった、思い出したくない記憶が一気に脳裏を巡ったらたまらない。思い出したい記憶だけを選択的に、また、試験の時など、思い出したい時だけに思い出せて活用できるようなる薬を待ちたいな。脳の中で記憶忘れたい記憶と覚えていたい記憶を区別できるのかはよく分からないが、痴呆症の人だからって、どんな記憶でも思い出せればいいでしょ、ということにはならないはずだから。
 いやはや、今日も忘れたいことばかりの一日。楽しい酒で忘れてしまおう。

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