今日は、新潟県魚沼市、玉川酒造のイットキー (It’s the key)純米酒っていうお酒。日本酒を選ぶ時の目安に日本酒度っていう糖分の指標とか、酸度っていう指標があるんだけど、この指標が普通の日本酒の五倍って紹介されている。糖分も酸も五倍の日本酒ってどんな極端な酒なんだろうって思うと、飲みたくなるでしょう。
良く冷やしてから、グラスに入れるとね、色はうっすら黄色みがかっているけど、とろみのような濃い感じはない。日本酒独特の匂いは全くなくて、酸味が効いたすっきりした香り。口に含むと白ワインのような感じ。ちょっと熟成させたような深みのあるフレーバーでありながら、とってもフレッシュな感じ。後味がすっきりする強めの酸味が食欲をそそるし、料理を邪魔しない感じがいいよ。全く新しいジャンルの日本酒っていう感じかな。
ただ、もしかして、相当アルコール多飲の人が作ったのかなって思ったよ。この酸の感じがね。
子どもの頃に、酒を飲まずに置いておくと酢になっちまってもったいないから飲むんだとオヤジが言っていたんだよ。本当か、嘘かは知らずに、そう刷り込まれて育ったわけ。
普通の日本酒を放っておいても酢にはならない。酸っぱくなったとしても酢ではなくて他の酸性の成分が増えるということはあるようだけどね。
ところがね、飲んだ酒は体の中で酢になる。酒のアルコールが代謝される過程で、アルデヒドになって、酢酸になって、最後に水と二酸化炭素になる。酢になるのは放っておいた瓶の中の日本酒ではなくて、飲んだ酒の方。それも飲む度に酢になる。口では酒を飲んだつもりでいても、体としては酢を飲んだたのと同じ状態になっている、ってことかな。
頭を使うと甘いものが欲しくなるって、よく言うでしょう。脳細胞が働く時には、基本的には糖分しか使わないので、頭を使った作業をしていると甘いものが欲しくなるって説明されている。もちろん、体中の細胞がきちんと機能するためには糖が必要なんだけど、特に脳はいっぱい消費するっていうことなんだよね。
それがアルコール依存症っていうくらい酒を飲むようになると、飲んでばかりで食べなくなったり、肝臓の働きなど、いろんな理由で血糖が下がりがちになる。そうなると、たくさんの糖を消費したい脳細胞は困るんだよ。
2013年にアメリカで発表された研究によるとね、アルコール多飲の人では、不足しがちな糖の代わりに、アルコールの代謝産物である酢酸もエネルギー源として積極的に使うように脳細胞が変化しているんだって。
そのせいかアルコール依存症の人は酸っぱいものを好む傾向があるようだよ。血糖値が下がったのを血中の酢酸で補うっていう生活を続けてきているので、頭を使うことをしようとすると酢が欲しくなるんだろうね。試験勉強中の学生がチョコレートが欲しくなるのと同じ感覚で、酢が欲しくなるって、考えるとちょっと怖いけどね。
今日のお酒の瓶を開けたとき、この話を思い出したんだよね。酢が欲しくなるのはアルコール多飲の人だったはずだなって。
そう、瓶を開けたら、ちょっと「酢」のような酸の匂いがしたんだ。本当の酢のように鼻につんと来る不快な臭いとは全然違うんだけど、どこか酢を思い出させるような匂いが、最初だけちょっとね。買って来てから、しばらく放っておいたからまさか酢になっちゃったのって、本気で心配したんだよ。
でも、美味しかったものだから、あぁ、このお酒を造った人はきっと、お酒が好きで飲むとあまり食べなくなっちゃって、酒を造るような頭を使うときには酸っぱいものが欲しくなるから、こういうお酒がおいしく感じられるんだろうなって。
十連休の最後の夜、新しいスタイルの日本酒を飲んで、また新たな気持ちで明日から働けそうだよ。明日は忙しくて、仕事しながら甘いものが欲しくなるかな?酢の方が欲しくなってたりして。いやいや、今晩は早めにおつもりにしよう。
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