日本酒造りには酵母が重要な役割を果たすが、発酵過程でアルコールを作る時にリンゴ酸を多く産出する酵母があるのだそうだ。リンゴ酸は高校の生物を習うと出てくる言葉だが、日本酒の味にそんなに関係しているとはびっくりした。
日本酒は、その味を数値化すると目的なのだろうか、日本酒度という数値が示されていることがある。先日飲んだ「甲子林檎」という純米吟醸の日本酒は、リンゴの香りが確かに強くするが、キレのいいすっきりした酸味もあって、特に「甘い」という感じはしないが、かなりの「マイナス」値で、ものすごく甘口のように表示されている。ところが、同じ日に飲んだ日本酒度が「プラス」値のだいぶ辛口に分類されるお酒と、口に含んだ時の「甘さ」という意味ではあまり変わらない感じだ。
日本酒の味が、ラベルに表示のある日本酒度や酸度だけでは分からないとはよく聞くが、数値と舌の感じがの一致がなかなか難しい。混乱しても、あれ、ちょっと酔ったかなって思って済ませられるのが酒のいいところ。冬のリンゴの味を夏に酒で味わせてくれる酵母の力に感服だ。
成人したてのころに、升にのせた塩をなめながら酒を飲む怖い大先輩がいたが、その人はいつも同じ酒を飲んでいて後輩にもそれしか飲ませてくれなかった。若くて腹が減ってしょうがないのに塩と酒を付き合わさせられたのがトラウマになったのか、その後長い間日本酒は口にしなかった。最近は、日本酒がおいしくて、楽しくなってきているが、これは時代が変わったからなのか、自分が歳を取ったからなのかよくはわからない。でも、気ままに酒を飲んで、このリンゴの香りの強い純米吟醸がおいしく感じられるのはなんだか幸せな、なんだか得をしたような感じがしてしまう。そうそう、高校生物の知識によれば、クエン酸と同様、リンゴ酸も疲労を取ってくれる働きがあるはず。そう思うとまた飲みたくなるなぁ。
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