2019/01/05 「あら、私たちもう厄年もないのね」

Jindai-ji, 2019

「あら、私たちもう厄年もないのね」
 さて、これは嬉しくて言っているのか、怒っているのか。耳に入ったその声の方を振り向いてしまった。六十を少し過ぎたくらいのご夫婦だろうか。厄年表を二人寄り添ってみながらどうも不満そうだ。厄年表を見ると、男女六十一歳が本厄、六十二歳が後厄で、確かにその後はない。
 還暦から先の人生も山あり谷あり、決して楽なものではない。還暦過ぎても定年はまだ先という世では、喜ばしいどころが不安が募るばかり。厄はもうないんだと、吹っ切れる人もいるだろうし、厄年が自分にはもう無いんだと神仏からの疎外感を感じる人もいるだろう。厄はもうないはずなのに生きていればいいことばかりではない。どこにすがってどう払ったらいいのか、見放されたように感じることもあるのだろう。
 ペットを抱えて厄払いの申し込み書を書く人、走り回る子どもたちと、老夫婦。気の持ち方一つ、とだけでは片付けられない、一枚の厄年表をめぐる一瞬の映像が響く読経ともに残ってしまった。
 今年のおみくじは大吉。深大寺のおみくじは凶が多いと言われるが、一昨年、昨年と凶が続いてさすがにへこんでいた。今年こそはいい年になりますように。結ばずに財布に入れて帰ったおみくじを、出して読もうか読むまいか。大吉の余韻を肴に喉を潤しながら考えるとしよう。

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