2018/06/03 酒のキラキラネーム

角打ちのお店 麹町 いづみや さん

 半蔵門に職場が移転してきてから、近くの角打ちの店で日本酒を飲むことがある。日中はいわゆる地酒を中心に売っている酒屋が、夜になると立ち飲みもさせてくれる。仕事帰りに店に入ると一升瓶の並んだ棚の前に立ってグラスに注がれた酒を飲むのである。料理は出さない本当の角打ちで、食べたければ袋入りのおつまみを買ってつまむ。
 日本酒の一升瓶というのはでかいし、家庭用の冷蔵庫に入らないことが多いし、入っても家族に邪魔にされるし、ワインなどのいわゆる四合瓶サイズのものと比べると大酒飲み感がでてしまって、おしゃれには見えないことが多い。だが、その一升瓶一本一本の個性が店の雰囲気を醸している一番のオブジェになっている。一升瓶の形は同じだが、ラベルがそれぞれに凝っていて見ていて飽きない。

 あまりに凝った子どもの名前がキラキラネームと呼ばれていたことがある。その反対に、今となっては少し古風な名前は、しわしわネームというのだそうだ。棚を見回すと日本酒はどうも「しわしわ」ネームが多い。ただ、名前が「しわしわ」であっても、ラベルはくっきりとした原色であったり、書家の揮毫であったり、かわいい絵が描いてあったりと、いろいろと工夫している。最近、真っ赤な西瓜の絵が描いてあって「酔夏」というラベルを見つけた。これでスイカと読ませる。びっくりするような漢字の読み方はキラキラネームの特徴の一つ。「酔夏」は日本酒の中でもだいぶしゃれたキラキラネームだね。

 日本酒は、蔵が同じでも、季節限定の酒が出たり、また、特別純米だったり、大吟醸だったりと、何種類もの酒が出てくる。夏酒を飲んで、夏酒のラベルを見ながら移ろう季節を楽しむ角打ちというのも粋だよね。

 焼酎の棚を見ると、こっちは日本酒よりも名前がだいぶ大らかだ。これはキラキラネームかな、「独奏会」と書いて「リサイタル」と読ませる。

 店の床板、棚は全体に黒く塗っていて、照明はスポットライトを棚に当てるような設計になっていて、まさに、棚に並ぶ一升瓶が作り出す陰影が楽しめるようになっている。赤提灯も暖簾もなく、開け放した店に入って酒の名前を告げて注文するのだが、キラキラネームだと、飲む前から顔が赤らみそうだ。(@麹町 いづみや さん 土日祝日はお休み)

 

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