一念不動 純米吟醸 熟成原酒 愛知県豊田市 関谷醸造 ほうらいせん 吟醸工房 2016年12月製造 アルコール分 17度 精米歩合55%但馬強力100% 熟成期間1年以上
すがるような思いだったのかもしれない。めでたい名前の付いた酒を正月から飲んできた。さて次はと、人形町の酒屋の冷蔵庫を眺めていたら、「一念不動」の朱色が目についた。「一番は前ばかりではない。いちばん後ろもある。だれでも前へ行きたがる。お前は後ろを狙え!」との文字と、何やら鳥が二羽。親子なのだろうか。思わず、手に取って買ってしまった。「蓬莱泉」の関谷醸造で、書家 福瀬餓鬼氏のラベルだとか。地酒ブームということもあるのだろう、ワインを思わせる瓶やラベルなど、酒屋の棚も華やかになって来ている中で、質感にこだわった紙と紙色にうまく乗せた朱、書体の妙。辛い日々が続いていた心に「一念不動」という言葉のインパクト。「但馬強力」っていう酒米の名前もよかった。なんか、元気を出さなくちゃ、って思っていた心にどしんと響いてしまった。出会いってこんなものかな。
ラベルが素敵なのに飲んでみると、気落ちしてしまう酒にもたびたび遭遇したけど、これはうまかった。一口、試飲してみて、おいしいね、と娘が言ってくれたのも嬉しかった。熟成で酸味も甘みも角が取れたまろやかさ、でもフレッシュ感がたっぷり残っていて、一人の晩酌でもなんか笑みがこぼれてしまう感じだった。一喜一憂しては右往左往してしまう毎日、うまい酒を口に含みながら、酒瓶のラベルを見ながら家族との団欒。酒を飲むのが独りでも、楽しい酔いが座を温めてくれたような気がして、また、元気になれる。さぁ、おつもりにしよう。
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